旅立ち♂と始まり♂

「じ、、辞令……!??」

 

「そうだ。剛山くんには東京事務所での勤務を命ずる。」

 

「そんな!僕、まだ入って半年も……っ!」

 

「決定事項だ……。気持ちは分かるが、今更変わらんよ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

湿っぽい。夏が近づいてきた匂いがする。

今年は台風が来るのもいつもより早い。

 

剛山 力(ごうやま りき)

みんなからはパワーなんて呼ばれている。

そんな僕は故郷の地から離れ、来月東京へ発つ。

 

「アイツらに言っとかないとな……。」

 

日が傾き家路に着く車が多くなってくる。

鳩と野良猫と僕しかいない公園のベンチから

重い腰を上げ、缶コーヒーをぐいと飲み干した。

 

スマホに目をやると

1件のメッセージが来ていた。

 

「早く帰って来ないと今日は雨らしいで」

 

終川 亜徳(ついかわ あとく)

僕の1番の親友。

いつだって彼と一緒だった。

大学時代は、遊ぶ時もメシの時も

原付で出かける時も……。

 

 

いつもは外さない

空き缶3ポイントフリースロー

今日は力無くゴミ箱の縁に転がった。

 

「亜徳だけじゃない……

今までお世話になったみんなにだって……。」

 

 

大きく深呼吸してから

グループにメッセージを入れる。

 

「来月から東京なってしもた〜‼️

辛いけどみんなまた会おや〜〜‼️」

 

色々な感情を押し殺した空元気なメッセージ

 

 

これでいい。

湿っぽいのは嫌いだから。こんな初夏の夜みたいな

 

 

 

頬が濡れた。

涙では無かった。

「やばい、雨だ!」

 

 

公園を飛び出し僕は走り出した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ、やってしもたなぁ。」

 

バケツを返したような大雨になり

スーツをびしょ濡れにしながら

シャッターの降りたタバコ屋の軒下で

雨宿りをしている。

 

家までまだ距離はある。

しかし、僕は心労が重なり

その場に座り込んでしまった。

 

 

もう一度スマホを見てみると

みんなから沢山のメッセージが届いていた。

 

「まじかよ!?寂しなるわ」

「みんなで送別会や!飲み行こう泣」

「パワー行くなぁぁ🥲」

「なんでワオだけ群馬なん❓」

 

みんなからの暖かいメッセージに

心が軽くなっていたその時、

 

 

 

「パワー!!」

 

切れかけた街灯の多いこの街で

その人影は輝いて見えた。

 

「あとっく!!!」

 

「やけん言うたやん。ほら、傘。」

 

「ありがとう。わざわざ」

 

「東京………行くんやってな」

 

「うん。あとくには1番に言おうと思っとったんやけど、、、、寂しなるな。」

 

 

2人で同じ傘に入り、いつもよりゆっくりと

家に近づいていた。

 

しばらくの沈黙

 

 

突然。

 

 

 

「………!!」

 

 

亜徳はその場で傘を放り投げ僕に抱きついた。

 

僕の時が…………止まった。

 

「離れとない!!

いや、別に友達としてやけど!」

 

 

そうは言うが彼の鼓動が雨音にも負けず

僕の胸に響いてくる。

 

「あとく、、、」

 

僕も彼を抱き返し、2人で濡れた。

 

明滅していた街灯が治り

僕ら2人を照らす。

 

 

その瞬間、僕は恋に落ちたのだった。

 

 

 

 

 

(ここでエンディング🤓)

(ピアノ系のラブソング)

(予算の都合で第2話未定)